映画 『日本のいちばん長い日(1967年版)』 レビュー
日本のいちばん長い日
を観賞しました。
この映画は1967年に公開され、2015年には役所広司さんらが主演するリメイク版も作成されました。
1945年8月14日のポツダム宣言受諾から、翌15日の昭和天皇による玉音放送までの、日本政府や陸軍、宮内省の激動の24時間を描いたドキュメンタリータッチの映画です。
それではレビューしていきたいと思います。
あらすじ
1945年7月26日、米英中の共同声明としてポツダム宣言が発表されます。
しかし当時の鈴木内閣では、受諾しようとする文民の大臣らと、なにがなんでも戦争を続け、本土決戦にまで持ち込もうとする陸軍大臣らとで対立が続いていました。
その結果ポツダム宣言受諾はなかなか決定せず、8月6日には広島、9日には長崎に原爆が落とされてしまいます。
それでも内閣ではついに決着がつかず、、昭和天皇が臨席される御前会議を開き、昭和天皇のご意向により、ポツダム宣言受諾が決定した訳です。
内閣ではポツダム宣言受諾の通告と天皇陛下による玉音放送に向けて大慌てで動き出します。
しかしそれをなんとしても止めようとしたのが陸軍の若い将校たちでした。
彼らはポツダム宣言受諾をさせないため、クーデターを行い、今のNHKや皇居(当時は宮城とよばれていた)、鈴木総理大臣の自宅などを襲撃します。
結局クーデターは陸軍の上層部により鎮圧され、首謀者の二人は自殺しました。
こうしてポツダム宣言受諾は昭和天皇により玉音放送として国民に伝えられ、日本は終戦を迎えたのです。
クーデターを企てた陸軍将校らの思惑
戦後の日本で生まれた自分には、クーデターを計画してまでも本土決戦に持ち込もうとする陸軍の考えが理解できていませんでした。
なぜ国民の命をさらに犠牲にしてまでも、戦争を続けたがるのかと。
しかしこの映画を見て、受諾に向けて手続きをする大臣たちと、戦争を継続しようとする陸軍将校たちの根幹にあるものは一緒の思いだったということが分かりました。
それは両者は日本の国のためを思っていたということです。
GHQ占領後も結果的に日本の天皇制は継続されましたが、当時は無条件降伏により天皇制が廃止される可能性もあったわけです。
陸軍将校たちは、本土決戦に持ち込み、国民が玉砕覚悟で戦うことで、戦況が好転するのを見測り、より有利な条件で戦争終結できるような形を目指し、クーデターを起こしました。
しかしこの陸軍将校たちの行動は暴走ぎみであったことは間違いありません。
彼らは直属の上司を殺害したばかりか、玉音放送を録画した玉音盤を奪取するために、皇居まで襲撃してしまいました。
彼らが守ろうとしている国体に対して、自ら銃を向けるというのは矛盾を感じざるをえません。
また彼らは国民が最後の一人になってまでも、国体を守り抜かんとしたわけですが、もし国民が一人もいなくなったら、国体の維持なぞできるはずはありません。
とはいえ、開戦してからのわずか3年半で、日本人は300万人が死に、1500万人が空襲などにより財産を失いました。(終戦当時の人口は7000万人)
これだけの犠牲を払っておきながら、ここでポツダム宣言を受諾してしまっては彼らの犠牲が無駄になってしまうと考えたのでしょう。
サンクコストがこれだけ膨大になってしまったことも、陸軍将校らが最後まで本土決戦を望んだ理由のひとつかもしれません。
スポーツのように明確な勝ち負けのルールが存在しない以上、自らの意思により敗戦を決定させることは相当のくやしさがあったことでしょう。
しかし戦争が継続していたら、死者がさらに増えることは不可避でしたし、北海道や九州までもが占領される可能性もあったわけです。
平和な時代を生きる我々からすれば、無事にポツダム宣言が受諾されて本当によかったと感じます。
というわけで、初めての映画レビューをしてみました。
自分にとっては初めての白黒映画鑑賞であったのですが、三船敏郎さんをはじめとしたみなさんの演技力もすさまじい。
白黒であったことで、より当時の本物の映像のように感じられました。
映画の最後では、このような日が二度と来ないことを祈って幕が閉じます。
現代に生きる我々の使命は、平和な日本がいつまでも続くように努力することなのかもしれません。